粉砕材と回収価値 — 唯一のマイナス項目
ランナーや不良品は粉砕して再び成形できます。その回収をどう評価するか、そして原価表を静かに良く見せてしまう二重控除について。
更新日
原価表のほとんどの行は足し算です。回収材は例外で、**合計から引かれる唯一の行**。だからこそ注意が要ります — 費用を増やす行より、減らす行のほうが検証されにくいからです。
本当に戻るもの
熱可塑性樹脂のランナー、スプルー、不良品は粉砕して再び成形できます。板金では端材を売りますが、ここでは**ホッパーに戻ります**。
ただし回収は無料でも無制限でもありません。
- 粉砕には電力と人手がかかり、粉砕機自体も回収すべき設備です。
- 再処理で材料は劣化するため、多くの仕様が粉砕材の比率に上限を定めています。
- 着色品や汚染した材料は同じ製品に戻せず、要求の低い製品にしか使えないことがあります。
だから粉砕材は**それが実際に置き換えているもの**で評価します。バージン材と一対一で置き換わるならバージン単価に近く、低グレード品にしか使えないならその製品の材料単価、仕様で粉砕材が禁止ならスクラップ業者の単価 — 金属と同じ状況です。
二重控除
この誤りは必ず部品を安く見せます。
- 材料を**製品重量だけ**で計上し、暗黙にランナーを無料と仮定する — そのうえで
- ランナーの回収額も控除する。
ランナーが二回引かれました。**全ショット重量で計上し、そのうえで回収額を控除する**。同じ節約の半分ずつを二度取ってはいけません。
これは板金のスケルトンと同じ形の誤りで、副産物に価値がある業種すべてに現れます。樹脂特有の癖ではなく、**型として認識する価値がある**ものです。
ゼロなら、ゼロと書く
熱硬化性樹脂は再処理できません。医療・食品接触部品では粉砕材が禁止されることが多く、客先が契約で禁じる場合もあります。
そのすべての場合で回収価値はゼロであり、**空欄ではなくゼロを入力**してください。ゼロは「検討した結果、なし」。空欄は「誰も知らない」。他社の表と比べる読み手には、その二つが区別できません。
この行が実際に良くなる場所
- ランナー重量そのものを減らす — ホットランナーやゲート設計は材料を「うまく回収する」のではなく最初から発生させません。常にそちらのほうが価値があります。
- 粉砕材を色とグレードで分別して保管し、より多くをバージン材の代替に回す。
- 立ち上げの捨て打ちを減らす。作るのに金を払い、再処理にもう一度金を払っている材料です。
順番は意図的です。発生しなかった材料は再処理費もゼロ、粉砕機の時間も占めず、劣化もしません。うまく回収するのは良いことですが、**発生させないほうが厳密に優れています** — 両方の行が見えるようになると、原価表がその差を示します。
関連ガイド
- 射出成形の原価計算 — ショット重量・サイクル・取り数
成形品の原価を10費目で積み上げる方法。ほぼすべてが三つの数字に帰着し、そのどれか一つを間違えると原価表全体が動きます。
- 型償却と取り数の経済性 — 金型判断の裏にある算数
取り数を増やせば型は高く、部品は安くなる — ある点までは。型費を正直に配分する方法と、二つの取り数案を勘ではなく数字で比べる方法。
- 空欄になりやすい六つの項目と、それぞれが原価をどちらへ狂わせるか
歩留り、余裕率、電力費、梱包数量、段取費など、記入されないまま残りやすい項目。空欄と「ゼロ」は別物であり、混同すると正しく見える誤った原価が生まれます。