空欄になりやすい六つの項目と、それぞれが原価をどちらへ狂わせるか
歩留り、余裕率、電力費、梱包数量、段取費など、記入されないまま残りやすい項目。空欄と「ゼロ」は別物であり、混同すると正しく見える誤った原価が生まれます。
原価表が間違うとき、その原因はたいてい計算式ではなく**記入されなかった欄**です。そして空欄はほぼ例外なく、原価を実際より**低く**見せます。
厄介なのは、低く出た数字が壊れて見えないことです。桁も揃い、内訳も並び、一見して正しく見える。だから誰も疑いません。
空欄と「ゼロ」は別の意味を持つ
これはこの製品の設計上の区別であり、単なる入力上の作法ではありません。
- **ゼロ**は「検討した結果、該当なし」。手直しをしない工場が手直し費にゼロと書くのは、正しい記述です。
- **空欄**は「まだ分からない」。誰も調べていないという事実そのものを表します。
空欄になりやすい六つ
1. 材料の歩留り
材料は**払い出した量**で計上します。製品に残った量ではありません。切粉、端材、スケルトン、裁断ロス — すべて購入して支払った材料です。
ここを製品重量で入力すると、原価は材料費の差の分だけまるごと低く出ます。六つの中で最も影響が大きい項目です。
2. 人と設備の余裕率
実測したサイクルタイムは、その一回の時間です。段取り、待ち、清掃、点検、休憩は含まれていません。余裕率を入れないと、存在しない工場の原価を計算したことになります。
3. 電力費
設備時間単価に含めるか、製造間接費に入れるか、どちらでも構いません。**両方に入れないこと**が重要です。この二重計上は、あらゆる業種で最も頻繁に起きます。
4. 一梱包あたりの製品数
梱包材は一個ずつ買うものではないため、一個あたりに換算する手間で飛ばされがちです。一箱に入る数で割るだけです。
5. ロットあたりの固定費
段取り、初品検査、外注先の最低受注金額。これらはロットで発生し、ロットサイズで割ってはじめて一個あたりになります。小ロットが高くつく理由そのものであり、空欄にすると小ロットの原価が実際より安く見えます。
6. 回収価値
切粉、端材、返材の売却額。ゼロのこともありますが、その場合も**ゼロと記入**します。空欄のままだと、売れるのに計上していないのか、売れないのかが区別できません。
そして二重控除に注意してください。材料を製品重量で計上し**かつ**回収価値を控除すると、同じ端材を二回引いたことになります。払い出し量で計上したうえで回収額を控除する — どちらか一方ではなく、この順序です。
なぜ全部埋める必要があるのか
自社だけで使うなら、多少の空欄でも運用はできます。しかしこの原価表を他社と比較したり、取引先に確認してもらったりする瞬間に、空欄は意味を変えます — **比較相手が埋めている欄をこちらが空けていれば、こちらの原価が不当に安く見える**からです。
その差は改善の成果ではなく、記入漏れです。そして読む側にはそれが見分けられません。
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